12月13日朝、その日の午前3時にパッキングしたこの包、この包をスエーデンへ帰るNさんに手渡すのに、私は羽田空港へ向かいました。

包みの中は「棺衣」のベースとなる、↓この藍色のダマスク織の布・・・

スエーデンの織物の恩師が重病で、近いかもしれない葬儀に私が昔織った「棺衣」を貸して欲しいとの連絡が10月にありました。それから私は全てのスケジュールを調整して、この藍色の「棺衣」の上に置く、金色の装飾帯を織る準備に入りました。

20年以上前に織った「棺衣」と同じ糸を捜し、藍染し、総称帯を織るための織り機を1台空け、その織機でダマスク織が出来るよう機構を取り付け、縦糸をセットして・・・ 織り始めるまでの気の抜けない山のような作業を、一歩一歩進めました。

途中体調を崩して、予定より1週間遅れの12月7日、ようやく試し織のスタートまで漕ぎつけました。

普通緯糸はシャトルに入れて織るのですが、金糸は撚りがかからないように板杼に少しずつ巻いて一段一段織って行きます。

1日に15~20センチほどしか織り進みません。

この金色の装飾帯のサンプル織りを早く織って、ベースの藍色の「棺衣」が手元にあるうちに、デザインや収まりを考えなくてはなりません。

12月12日の夜サンプルが織り上がりました。サンプル部分を機から外してベースの「棺衣」の上にそっと置いてみました。

どんな感じでしょうか?

20年以上間に織ったベースの「棺衣」の藍に染めた糸は、藍のアクが出て色が沈んでいます。

手元に残っていた金糸は、昔使ったものと違うので、色や密度をもう一度検討しなければなりません。

左側が20年以上前に織った部分、右側が今回織ったものです。

恩師の片腕だったNさんに羽田空港で会い、本体の「棺衣」を手渡した後、織り上がったばかりのサンプルを見て頂きながら、デザインや仕上げの方法を相談しました。先生へのクリスマスプレゼントを用意する時間もなかったので、手元にあったお守りに手描きのクリスマスカードを添えて、Nさんに託し、お別れしました。

翌日、Nさんから「棺衣を持って無事スエーデンに戻りましたの連絡」、先に本体だけでも運べてホッとしました。

金色の装飾帯のデザインが決まれば、後はひたすら織るだけです。織り上がったらそれを持って恩師に会いにスエーデンへ行く事になると思います。クリスマスもお正月もない年末年始になりそうです。