前日の夕方神岡でお友達と別れた私は、町の中心を流れる高原川の川辺にある「旅館みなべ」に泊まり、翌朝川の水音で目が覚めました。

この旅館を予約してくれたの幼馴染のYさん。Yさんは「旅館みなべ」の近くにある菓子店「金木戸屋」の店主で菓子職人です。笹巻羊羹で知られた「金木戸屋」さんを始めたYさんの祖父の後妻Tさんが、教員だった私の祖父母宅でねえやをしていた時期があり、その繋がりで長い間親しくさせて頂いているのです。

朝早く旅館まで迎えに来てくれたYさんの車に乗って、高原川を遡る事約20分、着いたのは・・・

Yさんとその仲間の、淡水魚観察愛護の「ちんかぶ会」の山小屋です。

Yさんは川釣りが好き、それで高原川の日本原産の淡水魚や川を守るためにこの会を30年近く前に始めました。

小屋の側には清流が流れ、敷地の中には池があり。。。

こんな水槽や

外から中が見えるガラスの水槽もあります。池や水槽にいる魚のすばしこく元気な事!

Yさんは毎日ここに見回りに来て、水槽の魚に餌をやっているのだそうです。

小屋の中には囲炉裏があり、この会のメンバーでもある木工作家作の木の椅子が並んでます。この日はここから更に山奥に入った場所のその作家宅を一緒に尋ねる予定だったのですが、事故があってそれがお流れになってしまいました。

前日の局所的大雨で、ソーラーパネルが設置してある場所で土砂崩れが発生し、川が濁ってしまったのです。その状況を確かめ対応処置のためをYさんは現場に行かなくてはならなくなりました。それで私はこの小屋で2時間Yさんの帰りを待つ事になったのです。

優しく爽やかな空気、眩しい太陽、繊細で生き生きした植物、私は清流で水遊びしたりしながら、幸せな時間を過ごしました。お昼近くにYさんが戻り、友達のお店にお昼を食べに出かけました。

お店に入って、窓の向こうに拡がる高原川上流の景色に私は息をのみました!

思わず「天国みたい!」と言ってしまいました。すると「未だ死んどらんぞ。」のYさんの声。

ここ「川甚亭」は鮎料理の店、私はメニューと睨めっこして「ザル蕎麦定食」を鮎の塩焼き抜きでお願いしました。

お蕎麦もご飯も山盛り、オカズは色々配慮下さりご覧の通り。Yさんは鮎の塩焼き付きですが凄いスピードで食べています。

昼食後寄った高原川上流の双六川。

この上流は双六渓谷で、小学校高学年に遠足で行った事があり、岩の間のどこまでも透明なエメラルド色の水は私の脳裏に焼き付いています。

日本山岳会の創始者の小島鳥水は著書「日本アルプス」で、飛騨双六谷について以下の様に書いています。「高原川の浄明な美しい水へと突っかけて来る双六谷の、そのまた水の麗しい事と言ったら、ただもう青い火である。私はそれを液体と言いたくない、たとい氷のように冷たくても、それは焔である。」

私はこの双六川の水をポットに入れて、帰りの車中で一口飲んで驚きました。美味しいとかいう前に水の密度が違うのです。自分の感覚が変なのかもしれないと思いました。それで残りは持ち帰って伊豆の水(地下水)と飲み比べてみました。

違う!同じ水とは思えない程全然違います。双六の水は密度が高くて何かが凝縮しているようなのに透明な感じ。伊豆の水はぼ~とふやけて何か薄まっているような感じなのです。この双六の水を料理に使ったら、どんなにか生き生きした料理になるだろうか・・・ そんな事が頭に浮かびました。

地球は本来美しく豊かだったのを、高原川上流の景色を見て、双六渓谷の水を飲んで、つくづく思いました。