糞掃衣完成4 袈裟・生地準備 の続きです。

表地の卍綸子を芯地のシルクオーガンジーと重ねてシツケで止め、その上に散らす山形布の位置を決めたら、いよいよ刺し子縫いに入るのですが、その前にもうひと仕事あります。

山型布の位置がずれないように、また周りが解れないように、周囲をくけます。

私は山型布の縁は切りっぱなしでくけましたが、裏側に少し折ってくけたり、刺し子縫いを非常に細かくする時は、くけないでそのままの場合もあるようです。

山型布をくけて固定したら、刺し子縫いのための線を引きます。先ず裏からアイロンで押さえて布の歪みをならし、硬めの段ボールの上(チャコで線が引きやすい)に表を上にして広げ、布が動かないように四隅をテープで止めます。

そして物差しをあて両端を重りで押さえ動かないようにして、チャコで縫い線を引いて行きます。

チャコよりヘラの方が消えないと「お袈裟を縫う会」の先輩から教えて頂き、ヘラも使ってみたのですが、縫っているうちに手指の湿気で綸子地が伸びて、ヘラの後が消えてしまうのが分かりました。

それでチャコに戻って、ペンシル型の固いチャコでシッカリ線を引き、刺し子縫いの途中で消えかかって来たら、線を引き直すようにしました。

表地にした古い卍綸子の着物は生地が薄くなったり拠れた部分があります。良い部分を使い1つのユニットにするためはぎ合わたものもあり、新品のシルクオーガンジーの芯地にのせてもヨレヨレ感は残ります。その様な状態の生地の上に線を引くには二重三重の注意が必要、それが作業を進める中で分かって来ました。

刺し子縫いの間隔は教本によると3~5mm、1cmに2本~3本です。私は運針は小学校の家庭科で体験しただけなので、無理なく兎にも角にも運針し終えるのが大切なので5mm間隔にしました。

線は1cm間隔で引き、先ず1cm間隔で刺し子縫いし、次にその真ん中を目分量で刺し子縫いする事に決めました。

教本「袈裟の研究」によると・・・

〇絹糸二本取りとする。
〇糸すじがよじれないよう。
〇あまり強くひっぱらないこと。
〇雑巾刺しはあまり細かくない方がよい。
とあります。

縫い糸は、ある教本では”絹手縫い糸二本取り”と、別の教本には縫い糸より太い”絹穴糸”二本どりとあります。選択に迷って「お袈裟を縫う会」を開催している住職様に相談。

すると”絹手縫い糸二本取り”が良いとのお答え。

理由は、糞掃衣を着けるのは大事な法要儀式の導師、お歳もとられているので、出来るだけ軽く質もやわらかい袈裟に仕上げるのが望ましいからとのこと。

裏を見ると縫い目が良く分かります。

普通糸二本どりは針穴に糸を1本通し往復で二本にしますが、これだと糸が捻じれやすいのが分かって来ました。それで最初に必要な長さに切った糸二本を用意し、その二本を針穴に一緒に通して縫う事で捻じれを少なくする工夫をしました。

上から下へでもその逆でも1筋刺し子縫いしたら、糸の端は1cm前後余裕をもたせて結び止めする、これは縫い上がった後のアイロンで伸びる時の余裕との事。

最初の2ユニットはそうしたのですが・・・

刺し子縫いして時間が経つと、糸の引き方や湿度も関係して、ある部分は縮まったりある分はそうでなかったり、変化して行くのです。

それで一筋刺し子縫いしたら、上端だけ1cm前後の余裕をもたせて結び止めし、

下端は結ばないで7~10cm糸をそのまま残し、1か月くらいその状態で置いて自然に縮んで落ち着いてから結ぶことに決めました。

結ばない下端の写真がこれ↑だけなので追加の説明です。これは最初に刺し子したユニットで縮んで小さくなり過ぎて布端をミシンで押さえてあります。

刺し子縫いを進めて行くと、手指の湿気で表布の綸子が伸びて、このようになって来ます。

そんな時は裏返してアイロンで押さえます。

ご覧の様に伸びた部分がほぼ平らになります。

面倒ですがアイロンで乾かしてダマシダマシ平らにして刺し子縫いしないと、全面がよじれて来て最後の5mm間隔の刺し子縫いで苦労する事になってしまいます。

それと一方の端から刺し子縫いして行くのでは無く、左右中央なるべく平均に刺し子縫いして行くと、縫い上がりも平均化するのが分かりました。

最後の27枚目のユニット、その最後の1筋の刺し子縫いのワンショット。

毎日刺し子縫いしたわけではありませんが、1月から10月まで、10ヶ月かかりました。

刺し子縫いが終ってから1か月間、縫い糸の片端は結ばないでそのままにして、自然に縮むのを待ち、出来上がり寸法の型紙と並べて大きさを確認。

それから下端の糸を結びました。

端から5mmくらいを結びます。年齢と共に指先がゴツクなってしまったので針を使って糸を寄せ結びました。

結び終わったら、糸端を切ります。

これで九条糞雑衣を構成する、27枚の刺し子縫いしたユニットの完成です。