この夏、仕事場の倉庫の大整理をした時、すっかり忘れていたものを発見しました。

エジプトのタペストリーです。

Mさんの仕事でエジプトに住んで居た時、滞在中だったMさんのお母さんも一緒にカイロ郊外の織物の村Harraniaへ行き、そこで買ったものです。義母様の日本の家族へのお土産だったのですが、飾る場所がないとの事でこちらにやって来て、倉庫に仕舞いそのままになっていました。

モチーフは「木と鳩」

木の葉の中には鳩が一杯!

木の足元にも鳩が一杯!

木の幹が足の様に表現されています。

具象表現が禁じられているイスラム文化圏では、タペストリーや絨毯も幾何学模様がほとんどなので、珍しい存在の織物です。

このタペストリーを織っているのは、Harrania村にある Ramses Wissa Wassef School の子供達やその卒業生。 モチーフのお手本は無く、身の回りの世界や各自のイメージを自由に表現して織られています。

この学校は1952年設立で、創設者Ramses Wissa Wassefはコプト(エジプトのキリスト教)建築家でカイロ芸術大学の教授。「創造性とはその環境が整えば内から湧いて来るもの」と、当時ラグや毛布が織られていたHarrania村の片隅にスタジオを建て、糸を染める植物のための畑も作られてスタートしました。

卒業生がお母さんになっても、子供を連れて工房へ通う事も出来る。そんなお母さんを見ながら育った子供たちが織物を始める。

村に根付いたこの絵織物は、創造や生きる喜びと同時に収入になって、70年も続いているのです。

笑っている鳩!

私はこの思い出一杯のタペストリーを、クリスマス前に老人ホームのMさんの部屋に飾りたくなりました。それで上部にポールを通せる部分を縫い付け、壁に吊るせるようにしてから横浜の老人ホームへ向かいました。

Mさんの枕元の壁に収まったタペストリー

ホームのスタッフの方の提案で、Mさんの個室で一緒に昼食。Mさんはお土産に買って行った崎陽軒の中華弁当、私はMさんの昼食のお味見です。今年1月半ばコロナ禍の中見学に行った老人ホーム、そこでこうしてお昼をいただくMさんと私。

本当に色々な事があったこの1年でした。ここまで歩んで来られた事に感無量です。