糞掃衣完成9 袈裟・仕上げ の続きです。
「座具」が初耳の方もあると思いますが、仏教儀式の時に床に敷いて使う敷物です。
私が袈裟の縫い方を習っていた曹洞宗では、袈裟と同じ生地で座具を作り、セットとして使うとの事。
実は私は、その事を糞掃衣を縫い終える頃初めて知りました。糞掃衣の袈裟だけを制作してお寺に寄進を考えていたので、それを聞いて少し慌ててしまいました。
糞掃衣は大きな儀式に着ける袈裟ですが、僧侶は袈裟を着けて畳んだ座具を腕に掛け儀式に臨むとの事。そして儀式中に座具を床に広げ、その前に座って頭を下げ礼をするとのお話。
↑これは中国の敦煌壁画の中の、唐代の仏教儀式を描いたものですが、座具の使い方がよく分かります。「袈裟史」井筒雅風著より
座具は広げるとこのようになっています。これは生地の関係で、巾は約70cm、長さは約106cmです。
袈裟とセットなので生地は袈裟と同じで、明るい色の部分は綸子の着物地、暗い部分は袴地です。
裏をつけますが、生地は表地に使った綸子の着物の八掛(袷の着物の裏地)です。
最初から糞掃衣の袈裟と座具をセットで制作する事を知っていたら、そのつもりで使う生地全部の割り振りが出来たのですが、遅かりし由良之助。
糞掃衣の袈裟の表地を既に裁った着物地の残りは、バラバラの端切ればかり・・・
考えに考えて組み合わせ、8枚はぎで何とか座具用の表地が出来ました。
表地に、これもはぎ合わせた裏地を重ね、縁取りになる袴地の布を縫い付けて行きます。
縁取りを縫い付け、8枚はぎの表地が何とか収まりました。
座具も、袈裟縫いに使われる「却刺」と呼ばれる特殊な返し縫いで縫います。
表地も裏地もヨレヨレハギハギでしたが、縁と真ん中の当て布に使った袴地がシッカリしていたので、何とか座具になりました。
夫の菩提寺に糞掃衣一式を寄進してから分かったのですが、菩提寺の高野山真言宗では座具は使わないのだそうです。その後ちょっと座具について調べてみたのですが、どうも座具を儀式で使うのは、曹洞宗と臨済宗だけのようでした。