台風による雨と風の中で眠りにつき、目を覚ますと暁の空に軽やかな雲が浮かんでいました。

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久しぶりのまとまった雨に、木も草も水を吸って生き生きとしています。 家の周りに飛び散った小枝や葉を片づけなくてはと、ダイニングの窓から外を見ると、藪の中の紫色が目に飛び込んできました。 なんだろう?

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それはアヤメの花でした。 刈安(カリヤス)でなくてアヤメだったのだと、それを下さったa夫人の事を思い出しました。

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このアヤメは、亡き父の故郷、飛騨古川からやって来たのです。 何年か前にお墓参りに行った時、お墓の近くにお住まいで何かとお世話になっているa夫人が、私に「お土産」と、新聞紙で丁寧に包んだ植物を二つ下さった、その一つなのです。

「あんたが好きだろうと思って」
庭に咲いていたのを、人に頼んで株分けしたものとの事でした。 植物の名前を聞いたのですが、忘れてしまったとのお返事。 野の花に詳しくて、それを切ってお墓に持って来て下さったa夫人なのに。 長く患っている病気がきっと悪いのだろうと、心を痛めてお暇したのでした。

一つは勿忘草(ワスレナグサ)のようだったので、勝手口から続く石段の脇に植えました。
もう一つはススキのような葉だったので、きっと私の染織の仕事を思っての刈安(カリヤス)だろうと、勝手口の向こうの藪の中に植えたのです。 何年も大きくならず、ススキの仲間で強いはずなのに不思議だなと、思っていました。

刈安(カリヤス)
イネ科の多年草で、その葉と茎を煮出して黄色の染料として使う。

アヤメだったのです。

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何年も無言で頑張って、今年やっと花を咲かせたアヤメ、
他界されたa夫人が笑っているような気がしました。
「咲きました、有難うございます」と、 空に向かって思わず言ってしまいました。