織物の研究と制作が私の本業です。 織物の中でも模様を織り出す技法に興味があり、ここ20年はダマスク織りを中心に織っています。

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白地に藍でパターンを織りだしたリネンの織物

ダマスク織は紋織物の一つで、日本では緞子(どんす)と呼ばれている織物です。 この模様を浮き出す技法が生まれたのは中国で、漢の時代です。 シルクロードを通ってその織物が西方に運ばれ、シルクロードの中継地だったシリアのダマスカスにその技法が伝わり、5~6世紀頃ダマスカスはその生産地となりました。 そしてダマスカスの織物、ダマスク織りと呼ばれるようになりました。

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ダマスクという発音が緞子(どんす)となったのかもしれません。 ササン朝ペルシャの文化の元、ダマスカスで織られていたダマスク織はどんな色、どんな模様だったのでしょう。

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私がダマスク織りを織ると、模様も色も、やっぱり私の世界になります。 伝わった技術はそこに生きる人や文化風土と一体になって新しい花を咲かせるのだと思います。 人や風土、文化、その違いが素晴らしく美しいのだと思います。

先日シリアから航空便で運ばれたお菓子が我が家にやって来ました。

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中東では知らない人はいないというダマスカスのお菓子屋さんのクッキーです。

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賞味期間が2014年11月30日から2015年11月30日とあります。
まだシリアの状況が良い時に輸出されたのかもしれません。 愛した土地、住み慣れた家を捨てて難民となり、さまよわなければならないシリアの人々。 何故こんな事が起こるのか、私に何が出来るのか。 特別な時にこのクッキーを開けて、深く考えてみようと思います。